気軽なクーペから本格スポーツモデルに転向?三菱・ミラージュアスティの進化に迫る!

みなさん、こんにちは!今回は、かつて三菱が生産していた2ドアクーペ、ミラージュアスティを紹介します。かつて多くのメーカーが生産していたセダンやハッチバックをベースにした2ドアクーペは、ミニバンとSUVが幅を利かせる現代、日本国内においてはほぼ絶滅してしまいました。今回は、中古車市場でも公道でもほとんど見かけなくなったミラージュアスティについて、一体どんなクルマだったのが、今改めて振り返ってみたいと思います。

1993年5月にデビュー

ミラージュアスティの紹介の前に、ベースモデルとなったミラージュについても簡単におさらいをしておきましょう。三菱・ミラージュの初代モデルが登場したのは1978年。三菱で初めて、フロントエンジン・フロントドライブを採用したクルマとして知られています。登場した当初は3ドアハッチバックのみで、のちに5ドアハッチバックと4ドアセダンが追加されました。

初代モデルの大きな特徴は、スーパーシフトと呼ばれるメイン4速、サブ2速の副変速機を備えたマニュアルトランスミッションです。エンジンとトランスアクスルの位置関係を調整するために、搭載せざるを得なかった逆回転用のギアを利用して副変速機として利用、実質8速として使用可能になっていました。大衆車にこうした技術を追加してしまうあたり、いかにも三菱らしいと感じてしまうのは筆者だけでしょうか…。

その後は1983年〜1987年に生産された2代目モデル、1987年から1992年にかけて生産された3代目モデル(ワゴンとバンのみ、2代目モデルが1992年まで継続生産)とフルモデルチェンジを重ね、1991年10月に4代目ミラージュが登場します。当初はそれまで通り、3ドアハッチバックと4ドアセダンのみがラインナップされていましたが、1993年5月に「アスティ」のサブネームを冠した2ドアクーペがデビュー。ボディタイプは3種類から選べるようになりました。

3ドアハッチバックがベース


出典:ウィキメディア

1993年に登場したミラージュアスティ。当初のラインナップは1.3リッター自然吸気4気筒エンジンを搭載するベースモデル「V」と、1.5リッター自然吸気4気筒エンジンを搭載した上級グレード「Z」の2種類のみで、トランスミッションはどちらもオートマチックとマニュアルが選択可能でした。特に「スポーツ性能を重視した」というわけでもなく、気軽に楽しむライトなクーペ、という位置付けで、特にベースモデルの「V」は車両販売価格が100万円を切るなど、非常にリーズナブルな価格設定になっていました。

参考:三菱・ミラージュアスティ買取専用ページ!
ベースとなったのは4ドアセダンではなく、3ドアハッチバック。ハッチバック部を延長してノッチバック化し、2ドアクーペとしています。曲線を多用する丸みのあるデザインは、当時の三菱のデザインで多く見られました。ちなみにプラットフォームに関しては、ひとつ上のクラスのランサーと共用しているものの、フロント周りのデザインなどが全く異なっているため、差別化はうまく行われていると言えるでしょう。

意欲的な価格が設定されたミラージュアスティですが、3ドアハッチやセダンと同様、内装のクオリティは歴代ミラージュの中でも最も高く、質感に優れていました。それもそのはず、バブル真っ最中に開発が進められたからです。

1994年1月には早くもマイナーチェンジが行われ、ミラージュアスティに最上級モデル「RX」が設定されます。「RX」は1.6リッターのMIVEC(三菱の可変バルブタイミング機構の総称)搭載・自然吸気直列4気筒DOHCエンジンを採用したスポーツ志向の強いモデルで、最高出力は175ps/7500rpm、最大トルクは17kgm/7000rpmというスペックを誇りました。ホンダのVTECエンジンとのライバルとも言われたこのエンジンは、自然吸気にも関わらずリッター当たり100ps以上の出力を叩き出し、ミラージュアスティは気軽なクーペから本格FFスポーツへと一気に変貌を遂げたのです。

限定車「スーパーアスティ」の登場

さらに、三菱はミラージュアスティに特別なモデルを用意しました。1994年1月から3月までの期間限定で販売された限定車、その名も「スーパーアスティ」です。

ベースとなったのは、ミラージュアスティの最上級グレード「RX」。その「RX」に大型リアスポイラー、プロジェクターヘッドライト、ワイパーフィン、MOMO製のステアリングホイール、フルオートエアコンなどの専用装備を装着し、さらに「ナイルブルー」という専用色も用意しました。

販売価格は「RX」の5MTモデルの169万4千円に対し、「スーパーアスティ」の5MTモデルは179万9千円でした。MTだけではなく、4ATモデルも用意され、こちらは188万9千円のプライスタグが掲げられています。わずか約10万円の上乗せで「スーパーアスティ」を購入できたのは、特別装備の内容から考えると、大バーゲン価格だったと言ってよいでしょう。

ちなみに専用色以外にも、専用色ではない黒「ピレネーブラック」が用意され、実際の販売台数はこちらの方が上でした。500台限定で生産された「スーパーアスティ」の内訳は、ナイルブルーのMTが97台、同ATが67台、ピレネーブラックのMTが241台、同ATが95台となっていて、ナイルブルーの合計164台に対し、ピレネーブラックの合計336台と、専用色ナイルブルーの個体ははかなり希少な存在です。

「スーパーアスティ」は、当時ラリーなどのモータースポーツで活躍していた三菱のスポーツイメージを担うモデルとして、台数こそ限定されていたものの、大好評のうちに生産を終了しました。

次期型には競技ベースモデル「RS」も追加


出典:ウィキメディア

1995年10月にミラージュのセダンとハッチバックが5代目にフルモデルチェンジを果たします。ミラージュアスティはそれから少し遅れて、1995年12月に次期型が登場しました。ラインナップはかなり拡充され、最もベーシックな1.3リッターの「V」から順に、1.5リッターのベースモデル「S」とその上級モデル「Z」、1.6リッターMIVEC搭載のベースモデル「R」、本皮巻きステアリングなどを採用した中級仕様の「RX」、フルオートエアコンなどを採用した最上級グレード「ZR」が設定されました。どのグレードでも、5速MTと4ATから選択できるようになっています。

また、ここに紹介したグレードとは別に、競技用ベース車両の「RS」も新たにラインナップされました。快適装備の簡略化と、エンジン周りに専用パーツを組み込んだモデルで、サーキット志向のドライバーにとってはかなり魅力的なグレードとなっています。

ミラージュはABSやエアバッグなど、低価格ながら安全装備が比較的充実していることが特徴のひとつでしたが、「RS」ではそうした装備が省かれています。省かれたのはABSとエアバッグのほか、キーレスエントリーシステム、電動ドアミラー、集中ドアロック、パワーウィンドウ、遮音材、リアワイパー、さらにエアコン(オプションで装着可)と、かなり徹底的に行われ、車両の軽量化に一役買っています。この辺りの潔い装備の簡略化は、ホンダのタイプRやポルシェの911RSなどと同様、スポーツモデルにおける伝統的手法のひとつと言えるでしょう。

一方で、走りに関する装備については、かなり手が入っています。エンジンの吸排気系の見直し、エキゾーストマニホールドの大径化、チタン合金製エンジンバルブの採用、水冷オイルクーラーへの換装、クイックシフトの採用とトランスミッションのギア比のクロスレシオ化(1997年以降)、ドア開口部付近のスポット溶接の打ち増しによるボディ剛性の強化、ステアリングギアレシオのクイック化など、ベースモデルとの相違点はかなりの数にのぼります。

ミラージュアスティのボディは、3ドアハッチバックのミラージュに比べて重量がありましたが、その分剛性に優れていました。がっしりとしたリアの感覚を好む競技志向のドライバーに愛され、今でも少数ですがジムカーナなどのモータースポーツで活躍しています。

2000年5月に生産を終了し、カタログから消滅してしまったミラージュアスティ。当初は気軽なクーペとして登場したミラージュアスティは、のちに三菱のスポーツイメージを担うスポーツクーペにまで成長し、そして7年に渡る歴史に幕を下ろしたのです。今では中古車市場でもほとんど出回らないクルマとなってしまいましたが、一度はステアリングを握ってみたい20世紀の名コンパクトスポーツクーペのひとつと言えるでしょう。

[ライター/守屋健]