9年8ヶ月にわたって生産された名車、日産180SX。誕生から30年…今改めて見直される、このクルマの魅力とは?

みなさん、こんにちは!突然ですが、1989年と聞いてみなさんは何を思い浮かべますか?時はバブル経済真っ最中。日経平均株価が史上最高額を記録…なんて話より、クルマ好きにとっては「多くのエポックメイキングなクルマたちが生まれたヴィンテージイヤー」として記憶に残っているのではないでしょうか?

ホンダ・NSXが世界初のオールアルミボディを引っさげて登場。トヨタ・セルシオが日本のみならず北米を席巻。マツダ・ロードスターが小型オープンスポーツカーを復権。日産・スカイラインGT-Rが最新技術の粋を集めて復活。挙げればキリがないほど、後世に影響を与えたクルマが多く誕生した年に、今回の記事の主役である「日産・180SX」も誕生しました。

2019年は、180SXが誕生してから30年、そして生産を終了してから20年が経過した節目の年でもあります。ドリフト競技車ベースとしてだけでなく、乗り味やパッケージングに今改めて注目が集まっている日産・180X。今回は、180SXというクルマに改めて迫っていきたいと思います。

一代限りに終わった名車、180SX


出典:ウィキメディア

日産・180SXが誕生したのは先述の通り、1989年のことです。「SX」の称号は、日産の国外輸出向けのクーペモデルに与えられていて、他にも「ZX」「NX」などがあります。180SXは、S13型シルビアの海外輸出仕様「240SX」がベースとなっていて、日産のクーペラインナップの中ではミドルクラスに属します。

180SXの誕生の裏には、営業サイドからの「販売のテコ入れで、ハッチバッククーペを販売したい」という強い要請があったと言われています。というのも、S13型シルビアの先代モデル、S12型シルビア(ガゼール)にはハッチバッククーペの設定があったものの、S13型にはその設定がなかったからです。

かくして、180SXはS13型シルビアに遅れること1年後、市場に投入されました。エンジン、トランスミッション、サスペンションなど、車体の基本構造はS13型シルビアと全く同一で、部品の互換性も確保されていました。ステアリングホイールは独自デザインとなっているものの、他のインテリアは共通、さらにドアパネルやフロントウインドリールドも共用部品となっています。

それにも関わらず、180SXのエクステリアはS13型シルビアとは全く異なるデザインに変貌していました。低く構えた薄いボンネットに、今や希少な存在となったリトラクタブルヘッドライト。流れるようなシンプルなルーフラインに、大きなガラスエリアを持つハッチバック。小さいながらもリアシートが用意され、大きく開くハッチバックにはタイヤなどの大きな荷物を容易に乗せることができました。

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ベースグレードで200万円を大幅に下回る販売価格に設定された180SXは、若者を中心に大きな支持を獲得しました。5ナンバーサイズ、エンジンの拡張性、フロントンジン・リアドライブ、そして既に数多く販売されていたS13型シルビア用アフターパーツが使用可能だった180SXは、オートマチックトランスミッションの設定こそあったものの、販売台数の90パーセントはマニュアルモデル。ちなみに、北米で販売された240SXは、そのデザインと社名の共通性から「240Zの再来だ!」と言われ、機能性や操縦性も高く評価されました。

フルモデルチェンジは一度もなし


出典:ウィキメディア

180SXは、大きく分けて「前期型」「中期型」「後期型」に分類できますが、フルモデルチェンジを受けたことは一度もありませんでした。シルビアはS13型からS14型、そしてS15型まで進化するものの、180SXは1989年5月の登場から1998年12月の生産終了まで、S13型シルビアがベースのまま、約10年間も生産され続けたのです。その間に生産された180SXの総生産台数は約11万5千台。あんなに山道や街中で見かけたのに、意外と生産数が少ない…と思うのは筆者だけでしょうか。

前期型は、1.8リッター直列4気筒DOHCターボから175psを発生するCA18DET型エンジンを搭載。S13型シルビアとは異なり、全グレードがターボエンジン搭載車でした。フロントバンパーにダミーのグリルがあることが外観での識別点です。

HICAS-IIと呼ばれる四輪操舵システムがオプション設定されていましたが、走り好きのドライバーからは「挙動がつかみにくい」として、あまり人気がありませんでした。グレードは「TYPE I」と「TYPE II」の2つで、「TYPE I」はスピーカーやパワーウインドウも省かれた硬派な競技車ベースモデルとなっています。

中期型は、最も生産台数が多く、中古車市場でも数多く見かけるモデルです。1991年から1996年に生産され、エンジンがSR20DET型2リッターDOHCターボエンジンに換装されたのが大きな変更点です。最高出力は205psを発生。若者の無謀運転による死亡事故の増加、それによる任意保険料金の値上げが話題になったのもこの時期です。

グレードは「TYPE I」「TYPE II」、さらにオートエアコンなど、装備を充実させた「TYPE III」の3種類でスタートし、1994年に「TYPE I」は廃止、「TYPE II」「TYPE III」はそれぞれ「TYPE R」「TYPE X」にグレード名が変更されました。外観ではフロントのダミーのグリルがなくなり、スッキリとした表情に変身。タイヤのサイズアップやアルミホイールのデザインの変更も行われています。

1996年1月に「TYPE R」をベースとした限定車「TYPE R スポーツ」が300台限定で発売されました。専用ボディカラーのプラチナホワイトパール、ストラットタワーバー、サイドシルプロテクター、ニスモスポーツマフラーが装備された他、軽量化のためにオーディオレスとなっていて、スポーツ志向のドライバーに高い人気を博しました。

後期型は、1996年から1998年に生産されました。外観の変更を含むビッグマイナーチェンジが行われ、フロントバンパーのデザイン変更、リアの丸型コンビネーションランプ、大型リアスポイラー、リアブレーキの容量アップ、ABSの標準装備化、アルミホイールのデザイン変更、内装のデザイン変更が施されました。

それまでターボモデルしか存在しなかった180SXですが、このタイミングで2リッター自然吸気エンジンを搭載する「TYPE S」を追加。1997年には「TYPE S」をベースに装備充実を図った「TYPE G」も追加されます。モデル末期にこうしたグレードを新たに追加することは珍しく、日産の180SXに対する愛情を感じる部分ですね。

この頃には、既にバブルも崩壊し、実用性の乏しいクーペモデルの人気は下火になっていました。180SXもその例に漏れず、最終的には生産ラインにも載せられないまま、ほぼハンドメイドで細々と生産が続けられ、1998年12月、ついに約10年間の歴史に幕を下ろすのです。

外装の互換性が生んだ、変わり種モデルたち


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180SXとS13型シルビアは、車体のほとんどの部分が共通していることから、多くの交換部品、チューニングパーツに互換性があることは先述の通り。その互換性を生かして、外装パーツの変更を行ったクルマが登場し、当時話題を集めました。

その名も「シルエイティ」や「ワンビア」です。180SXのフロント部分をシルビアに改造したのが「シルエイティ」。シルビアのフロント部分を180SXに改造したのが「ワンビア」です。

もともと輸出仕様で、メーカー純正による「180SXのフロントを持つシルビア」というクルマは存在していました。「シルエイティ」にすることで、リトラクタブルヘッドライトの重さを軽減できる、と考えたチューナーたちが始めた改造とされていますが、後に日産も「シルエイティ」の商標を登録するほか、雑誌、ゲーム、漫画、アニメなどを通して知名度も向上。1998年に、名古屋のチューニングショップが日産純正扱いの「シルエイティ」新車販売を500台限定で行ったことも大きな話題となりました。

現在、中古車価格上昇中!

スカイラインGT-R、フェアレディZ、シルビアの日産3大スポーツモデルの影に隠れがちな存在の180SX。しかし、S13型よりも50:50に近い前後重量配分や、大きなハッチバックの開口部が生み出す独特のしなりが、コーナーリング時により好ましいフィーリングを得られるとして、現在でもドリフト愛好家やサーキットを楽しむドライバーに熱い支持を受けています。

そして近年、中古車価格がじわじわと上昇中です。中古車の平均相場は100万円以上。15万キロを超えたクルマですら、5年前では考えられないほど高値を付けている状況です。180SXを売りたいという方、あえて今180SXに乗りたいという方、動く時期が来ているのかもしれません。それではまた、次回の記事でお会いしましょう!

[ライター/守屋健]