斬新なデザインが特徴のコンパクトクーペ、マツダ・オートザムAZ-3。FFながら機敏な運動性を実現!

みなさん、こんにちは!今回はかつてマツダが「オートザム」チャンネルから販売していたコンパクトクーペ、AZ-3を紹介します。AZはそのまま「オートザム」の略称、3はクルマの車格を表しています。マツダは2019年に、車名を海外と同じく「アクセラ」から「マツダ3」へ、「アテンザ」を「マツダ6」へと次々と変更していますが、AZ-3の時代からそうしたネーミングの伝統は始まっていたのでした。

姉妹車であるユーノス・プレッソと合わせると、合計約22万台が生産されたマツダ・オートザムAZ-3ですが、現在の日本の中古車市場ではほとんど見られなくなってしまいました。そんな懐かしのAZ-3の魅力に、今改めて迫っていきたいと思います!

ユーノス・プレッソとは姉妹車


出典:ウィキメディア

マツダ・オートザムAZ-3の販売期間は1991年6月から1998年9月までの約7年間。1998年6月には生産を終え、その後は在庫販売のみとなっていました。姉妹車であるユーノス・プレッソの販売は1991年3月からなので、AZ-3はそれに遅れること3ヶ月で販売開始された、ということになります。

当時のマツダは初代ロードスターを成功させ、ユーノス・コスモで3ローターのロータリーエンジンを採用するなど、かなり意欲的なクルマを多く送り出していました。「ユーノス」ブランドのスポーツタイプ第3弾にあたるユーノス・プレッソとオートザムAZ-3にも大きな期待がかけられていたことは間違いありませんが、一方でメカニズム的なトピックは少なく、デザインを重視して開発されたスペシャルティカーでした。

ユーノス・プレッソとマツダ・オートザムAZ-3の外見上の差異はほとんどなく、インテリアとエクステリア各所に付けられたエンブレムくらいしかありません。発売当初は、搭載されているエンジンに差が付けられていましたが、後にエンジンに関しても共通化されてしまい、両車の違いは車名とグレード以外なくなってしまいました。

デビュー当初は直4エンジンのみ

デビュー当初、AZ-3は1.5リッターの直列4気筒エンジン、ユーノス・プレッソは1.8リッターのV型6気筒エンジンを搭載していたため、キャラクターのすみ分けとしては、AZ-3が少しカジュアル寄り、ユーノス・プレッソがよりラグジュアリー、という役割が与えられていました。

用いられたプラットフォームは、マツダ・Bプラットフォームをもとにしたマツダ・Eプラットフォームと呼ばれるもので、マツダのクーペ型コンパクトカー用に開発されたものでした。後継プラットフォームは存在せず、一世代のみで終わってしまったプラットフォームで、かつ使用されたのはAZ-3とその姉妹車のみという、結果的には「専用に開発されたプラットフォーム」とほぼ同義となっていると言ってよいでしょう。

参考:マツダ・オートザムAZ-3買取専門ページ!

デザインを担当したのは、当時のマツダのチーフデザイナーだった荒川健氏。三菱自動車から移籍したのち、AZ-3の他に、ユーノス500などのデザインも担当しました。AZ-3は全長4,215mm、全幅1,695mm、全高1,310mmという、5ナンバー枠に余裕で収まる今となっては非常にコンパクトなサイズで、3ドアハッチバッククーペの基本シルエットをもちます。

デザインと実用性を両立


出典:ウィキメディア

ごく一般的な車体形式である3ドアハッチバッククーペを、荒川氏は大胆にデザイン。フロントボンネットを極めて低くし、フロントからリアにかけてなだらかに上昇していくサイドビューを構成。キャビン後ろをグッと絞り、大きなハッチバックゲートは大きく湾曲した3次元加工のガラスを採用。ボディの後端には、ボディ一体型のリアスポイラーが装備されています。かなりのコストがかけられた3次元ガラスのハッチバックゲートを採用したおかげで、後席部分のサイドウインドウは省略されており、一見すると2シーターにも見えます。実際は、尻上がりになっているデザインのおかげで後席の広さ・居住性も十分に確保されており、大人2人が座っても頭上に余裕がある空間が確保されていました。

ハッチバックのゲートのサイズも大きく、外見からは想像できないほどの大きな荷室があるのもAZ-3の特徴のひとつです。ハッチバックの開口部から、なんとチェロですら搭載できるほど!躍動感のある大胆なデザインと、実用的なスペースユーティリティを両立した稀有な例と言えるでしょう。

サスペンションの形式は前輪がマクファーソン・ストラット、後輪がストラットとオーソドックスなスタイル。駆動方式はフロントエンジン・フロントドライブのみで、トランスミッションは5速マニュアルと4速オートマチックが用意されていました。

エンジンはのちにプレッソと共通化

搭載されるエンジンは、当初は「B5-ZE」型と呼ばれる、1.5リッター自然吸気直列4気筒DOHCエンジンで、120psの最高出力と13.5kgmの最大トルクを発生しました。エンジンの最高出力は特別大きいものではありませんでしたが、1,030〜1,160kgという軽量ボディを武器に、軽快なハンドリングを実現。ユーノス・プレッソには、登場時「世界最小V6」を謳う1.8リッターV型6気筒エンジンが搭載されていましたが、フロントが軽いAZ-3は前後の重量バランスに優れ、クルマの全体的なバランスはAZ-3の方が上でした。

AZ-3の登場時のグレード構成は、基本的には1.5リッター直列4気筒エンジン搭載車である「Si」のモノグレードでした。その「Si」に、「スペシャルパッケージ」「ABSパッケージ」「スーパーサウンドパッケージ」の各パッケージ装着車がラインナップされるという、シンプルな構成になっていました。

デビューしてから約1年後、1992年2月に特別仕様車の「AVスペシャル」、1992年6月に同じく特別仕様車「SRリミテッド」が追加されました。それからさらに1年後の1993年9月にオートザムAZ-3とユーノス・プレッソが同時に仕様変更が行われ、プレッソには1.5リッター直列4気筒エンジンが、AZ-3にはプレッソに搭載されていた1.8リッターV型6気筒エンジンがラインナップされ、両車のエンジンは共通仕様になります。

このとき、1.8リッターV型6気筒エンジンはレギュラー仕様からハイオク仕様に変更され、エンジンのスペックが最高出力140ps、最大トルク16kgmから、5ps・0.2kgmアップの最高出力145ps、最大トルク16.2kgmに向上しました。

今に受け継がれる「人馬一体感」

1.8リッターV型6気筒エンジンは登場時「世界最小V6」でしたが、ユーノス・プレッソのデビュー後わずか3ヶ月後に三菱から1.6リッターV6が登場し、あっさり世界最小の座から転落。重い、燃費が悪い、壊れやすい、とデメリットも多いエンジンでしたが、ショートストローク設計を生かしたレスポンスの良さとスムーズなエンジン特性、甲高いエンジン排気音は、このエンジンならではの特徴でした。コスト重視の現代では生まれることのない、この時代ならではの「技術オリエンテッドなエンジン」と言ってよいかもしれません。

グレード体系もこのタイミングで整理され、1.5リッターエンジンのベースグレード「Si」、中級モデル「Si-A」、1.5リッターの上級モデル「Si-X」、1.8Lのベースモデル「GT-A」と最上級モデル「GT-X」の5タイプとなりました。1994年5月には、ベースグレード「Si」をベースに装備を充実させた特別仕様車「Siセレクション」が販売されました。

1994年5月、特別仕様車「Siセレクション」をベースに、DSP機能付の高級オーディオシステムを搭載した「DSPパッケージ」が発売されます。1996年4月には全車に運転席SRSエアバッグシステムが標準装備となり、グレード構成も1.5リッターの「Siセレクション」「Si-X」、1.8リッターの「GT-A」の3グレードまで絞り込まれました。そして先述の通り、1998年6月に生産終了、1998年9月に販売終了となります。

FFとは思えない機敏なハンドリングと、ダイナミックな美しいデザインのマツダ・オートザムAZ-3は、今のマツダにも通じる「人馬一体感」を備えたコンパクトクーペでした。直接の後継車は存在せず、2019年7月現在の国内の中古車市場ではわずか1台しか流通しない希少車となってしまいましたが、その志は今のマツダにも脈々と受け継がれています。それでは、また次回の記事でお会いしましょう!

[ライター/守屋健]