躍動感を感じさせるスタイリングが魅力だったFFクーペ、ユーノス・プレッソ。登場時世界最小のV6、はたしてその走りは?

みなさん、こんにちは!今回は、かつてマツダがユーノス・ブランドで生産していたFF3ドアハッチバッククーペ、ユーノス・プレッソを紹介します。1990年代、マツダは複数の販売チャンネルからクルマを販売していて、マツダ・オートザムAZ-3とは姉妹車関係に当たります。

バブル経済前後には数多く見られたクーペスタイルのスペシャルティカーも、2020年が近づいてきた現代ではほぼ絶滅してしまいました。そんな懐かしさすら感じさせるユーノス・プレッソについて、今改めて紐解いていきたいと思います。

ユーノスが放つスポーツモデル


出典:ウィキメディア

ユーノス・プレッソが販売されたのは1991年のこと。3月のスイスで行われたジュネーブショーで、「MX-3」としてデビューしました。イタリアン・グランツーリスモを思わせる躍動感と抑揚のある流麗なデザインは、ヨーロッパでも高い注目を集め、大都市の街角には大型看板が設置されるなど、大きな期待がかけられました。

1991年6月には、日本においてユーノス・チャンネルから販売を開始します。ユーノスは1989年にロードスター、1990年にコスモを発表しており、特にロードスターは「ライトウェイトスポーツカーを現代によみがえらせた」として、極めて高い評価を受けると同時に、好調な売り上げを記録していました。ユーノス・プレッソもユーノスから登場したスポーツモデルの第3弾として、満を持して登場したと言えるでしょう。

とはいえ、ロードスターのようなFRではなく、コスモのようなロータリーエンジンも搭載していないプレッソの武器は、塊感がありつつ躍動感のあるエクステリアと、搭載されていた発表当時世界最小のV型6気筒エンジンにありました。

コンパクトながらダイナミックなエクステリア

デザインを担当したのは、荒川健氏。三菱自動車で活躍後、チーフデザイナーとしてマツダに移籍しました。クルマのレイアウトとしては、一般的な横置きエンジンのコンパクトなFF3ドアハッチバックですが、そこにプレッソならではのデザインをいくつも織り込んでいます。

Aピラーを大きく寝かせて、さらにそこにV6エンジンが収まっているとは信じられないほど低められたフロントボンネットを配置。後ろ上がりのデザインにすることで、ハッチバックスタイルながら、後席の頭上スペースも十分に確保しています。フロントマスクのデザインは、当時提携関係にあった、のちのフォード・トーラスのデザインにも受け継がれていきます。

参考:ユーノス・プレッソ買取専門ページ!

リアにかけては、ボディをかなり強く絞り込み、かつハッチバックのガラスゲートをぐるりと囲むように大きく湾曲させた大胆なデザインとなっています。見るからにコストがかかったハッチバックゲートですが、見た目だけではなく、かなりの積載能力を誇る優れもの。ハッチバックゲートのサイズが大きい、ということもあり、なんとチェロをハッチバックゲート内の荷室に搭載することも可能でした。

5ナンバーサイズのコンパクトなFFハッチバックでありながら、ワイド&ローを感じさせる躍動感のあるエクステリアと、4人の居住空間を両立させたデザインチームの手腕は、高く評価されるべきでしょう。特徴的なサイドビューとリアビューは、今見ても十分魅力的かつ個性的なデザインと断言できます!

ボディサイズは全長4,215mm、全幅1,695mm、全高1,310mmと現代からすると非常にコンパクト。車重は1,030〜1,160kgと、こちらも現代の感覚からすると非常に軽量になっており、このコンパクトで軽いボディとV6エンジン、躍動感のあるエクステリアで、発表当時はかなりの注目を集めました。

V6エンジンは諸刃の剣


出典:ウィキメディア

フロントに搭載されていたエンジンは、発表当時世界最小排気量の「K8-ZE型」1.8リッターV型6気筒DOHC24バルブエンジンで、当初は140ps、1993年からはハイオク仕様となったことに伴い145ps、16.2kgmを発生しました。しかし、このエンジンが世界最小を謳っていた期間は少なく、わずか3ヶ月後に三菱自動車がランサーとミラージュに1.6リッターのV6を搭載してしまったことにより、その座をすぐに明け渡してしまいます。

エンジンに関しては当初、プレッソについては1.8リッターV6のみ、姉妹車のオートザムAZ-3には1.5リッターの直列4気筒エンジンのみ、というすみ分けでしたが、1993年9月には1.5リッター直4エンジンがプレッソにも搭載されるようになります。また、AZ-3にも1.8リッターV6が搭載されるようになり、搭載されるエンジンが共通化されました。

この1.8リッターV6エンジンが、ユーノス・プレッソがプレッソらしさを成り立たせているという面もありつつ、多くの欠点も抱えているという諸刃の剣でもありました。一気筒あたりの排気量が300ccと小さく、ボア×ストロークもφ75.0×69.6mmとショートストローク型であることも手伝い、高回転まで軽快に回り切る気持ちいいエンジンフィールを実現。5速マニュアルトランスミッション搭載車であれば、自身で適切なギアを選びつつ、リアから聞こえてくるハイトーンな排気音を楽しめます。エンジンレスポンスも非常によく、アクセル操作に対して俊敏に反応する様子は、まさにスポーツユニット!と膝を叩きたくなるでしょう。

しかし、実際の出力やトルク値は、同排気量の直列4気筒エンジンと特に差はありませんでした。また、エンジン部品の点数が増えたことによる重量増、前後の重量バランスの悪化、エンジンの機構が複雑かつ細かくなったことによる故障の増加、そして燃費の悪化など、多くのデメリットを抱えることも事実です。合理的な判断で生産されたエンジンとは言い難く、技術優先で「これを作りたい!」という情熱でできあがったユニットと言ってもよいでしょう。

ちなみに、途中追加された1.5リッター直列4気筒エンジン「B5-ZE型」のスペックは115ps、13.5kgmと、取り立てて特別なものではありませんでしたが、前後の重量バランスに優れ、エンジン自体が軽量であるために、走りのトータルバランスはこちらの方が上でした。

人馬一体感のあるハンドリング

発表当時のグレード構成は、Hi-X、Fi-X、Fi-X SVの3種類でした。Hi-Xは最もベーシックなグレードで、プレッソのボトムを担うモデル。Fi-Xにはオートエアコンやチルトアップ機構付きサンルーフ、アルミホイールなどが標準装備となった中級仕様。Fi-X SVは、それらに加えてさらにDSP、7スピーカー、当時最新鋭の6連装CDオートチェンジャーなどの高級オーディオシステムや、コーナリング時のトラクションを改善するビスカス式LSDを装備した最上級グレードでした。

マツダの初代ロードスターでは、ステアリングの操作に対してノーズをグイグイと曲げていく、「人馬一体」と称されるようなハンドリング感覚が絶賛されましたが、FFで駆動方式が異なるプレッソにも、その特性は受け継がれています。ハンドリングは非常にクイックで、中速域以上のコーナリングではむしろ落ち着きのなさすら感じるほど。特にリアの座りが悪いので、積極的にタックインを使って曲げていける上級者にとっては、非常に楽しいクルマとなるでしょう。

国内流通量は極小

プレッソが販売を終了した1998年から、すでに20年以上が経過しました。AZ-3と合わせて約22万台が生産が生産されましたが、そのほとんどはすでに姿を消してしまいました。国内の中古車市場で出回っている個体も一桁と非常に少なく、また年々部品の調達などが難しくなってきているのが現状です。

プレッソは、イタリア語で「仲間」という意味で、車名にはドライバーにとっての良き友人であれ、という意味が込められています。今後、プレッソを楽しむためには、維持についてそれなりの覚悟が必要ですが、気になった方はぜひ一度ハンドルを握ってみてくださいね。それでは、また次回の記事でお会いしましょう!

[ライター/守屋健]