優美なデザインの2ドアクーペ、マツダ・MX-6。快適装備が充実した大人のラグジュアリースポーツ、その魅力とは

みなさん、こんにちは!今回はマツダがかつて生産していた2ドアクーペ、MX-6について取り上げます。日本がバブル景気に沸く中、マツダはユーノス、アンフィニなどといった多チャンネル戦略を取っていましたが、MX-6はマツダ店での専売モデルとなっていました。

生産期間が短く販売も伸び悩んだMX-6は、2019年7月現在、国内の中古車市場では1台も出回っていない希少車となっています。日産・シルビアなどの「武闘派クーペ」人気に押され気味だったMX-6、その優雅な魅力に今改めて迫ります!

マツダの多チャンネル化の中から誕生


出典:ウィキメディア

マツダは、バブル景気後半の1988年、海外での販売を主軸に置いた経営戦略への危機感から、国内での販売台数を倍増させる計画を立案します。「B-10計画」と名付けられたこの計画に沿って、それまで国内に存在していたマツダ、マツダオート、フォード系のオートラマという3つの販売店に加え、1989年に高級車ブランド「ユーノス」と軽自動車販売メインの「オートザム」を設立。また、マツダオートを1991年に「アンフィニ」へ名称変更し、高級車専門ブランドとしました。

国内5チャンネルの販売網を敷く、という意味では当時のトヨタ、日産と同様でした。しかし、多チャンネル化によって爆発的に新型車が増え、ブランドイメージの混乱を招いてしまいます。また、販売チャンネルごとに専売車種を設定したことによる研究開発費の高騰、なによりバブル崩壊による景気低迷などがマツダを襲い、結果的に5チャンネル体制は失敗。その後は経営難に陥り、長い冬の時代を過ごすことになります。

MX-6は1992年1月に販売が開始されました。バブル景気に乗るべく、計画を前倒しして販売開始にこぎつけたと言われています。ベースになったモデルは、1991年にマツダ・カペラの後継モデルとしてデビューしていた「クロノス」。3ナンバー税制の見直しにより、三菱・ディアマンテなどのライバル車が次々と大型化していく中、クロノスも新規開発の「GEプラットフォーム」を採用し、3ナンバーボディをまとって登場します。当時、マツダ期待のミドルクラスセダンでした。
他メーカーは、ボディが5ナンバーから3ナンバーになっても、クルマの名称を変更することは稀でしたが、マツダは長年親しまれていたカペラの名前をあっさりと捨て、「クロノス」に名前を変更。このクロノスはマツダの多チャンネル戦略の核となり、クロノスをベースにした多くの姉妹車が生まれました。

クロノスベースの姉妹車たち

マツダ店専売のクーペ「MX-6」、アンフィニ・チャンネル専売のハッチバック「MS-6」と4ドアハードトップ「MS-8」、ユーノス・チャンネル専売の4ドアサルーン「500」、軽自動車主体のオートザム・チャンネルにおいてフラッグシップセダンとして設定された「クレフ」、オートラマ・チャンネルで販売された、マツダとフォードの共同開発車である2ドアクーペ「フォード・プローブ」と4ドアセダン「フォード・テルスター」など、現在の感覚では信じられない数の新型車が同時期に投入されました。

参考:マツダ・MX-6買取専用ページ!

しかし、野心的な設計を持ち、贅沢なつくりをしていたにも関わらず、姉妹車すべてを合計しても月の販売台数が1万台に届かないという、販売的には失敗作となってしまいます。バブル景気も終わりを迎え、販売台数は回復することなく、1995年末にMX-6はひっそりと販売を終了。その間に行われた一部改良は一回のみ、それもコストダウンを感じさせるさびしい内容でした。

MX-6は全長4,610 mm、全幅1,750 mm、全高1,310 mm、ホイールベース2,610 mm、車重1,170〜1,240kgという、当時としてはかなり大柄の2ドアクーペです。後部座席は狭く、車検証上の乗車定員は4名でも、実質非常用としての居住性しか確保されていません。広めの全幅に対し全高は低く、優美で伸びやかなエクステリアは、当時としては日本車離れしたスタイリングだったと言えるでしょう。

V型6気筒エンジンをフロントに搭載

搭載されるエンジンは2種類で、2.5リッターと2リッターの自然吸気V型6気筒エンジンが設定されました。2.5リッターエンジンは最高出力200 ps/6,500 rpm、最大トルク22.8 kg・m/4,800 rpm、2リッターエンジンは最高出力160 ps/6,500 rpm、最大トルク18.3 kg・m/5,500 rpmのスペックを持ち、それほど重くはないボディを軽快に引っ張ります。

どちらのエンジンもショートストローク型のエンジンとなっていて、トルクが豊富とは言えないものの、特にマニュアルトランスミッション車の場合、気持ちのいい吹け上がりを体験できました。280psを発揮する国産車も珍しくなくなってきたいたこの時代、スペック的に特筆すべき点はなかったものの、MX-6のキャラクターには合っていたと言えるでしょう。

MX-6は低いボンネットが特徴ですが、それは搭載されていたエンジン「KL-ZE」(2.5リッター)と「KF-ZE」(2リッター)に秘密がありました。どちらもバルブ数が4つのDOHCですが、エンジンの全幅と全高を抑えるために、DOHCのカム間を歯車駆動方式としていたのです。

駆動方式はフロントエンジン・フロントドライブのみ。四輪駆動の設定はありませんでした。
FRや四輪駆動のスポーツモデルが市場をにぎわせる中、MX-6のFFのみという駆動方式は、走り好きのドライバーたちにはあまり響かなかったのかもしれません。しかし、そこはマツダのスポーツモデル。ハンドリングについてはきちんと煮詰められていて、ステアリングを切っただけノーズが曲がる軽快な操作性を実現していました。トランスミッションは、ごく一般的な5速マニュアルと4速オートマチックから選べました。

充実の快適装備

デビュー当時は全車に4WD(四輪操舵)を標準装備。エアコンもオートエアコンが標準装備で、バケットタイプのシートの表皮は本革製も選択可能でした。コクピットのスイッチや計器類はドライバー側に向けられていて、ドライバー中心のインテリアとなっているのが特徴です。前述のように快適装備は非常に充実していたのですが、後席は狭く、実用性は今ひとつといったところ。しかし、独立したトランクは広く大きく、後席を前に倒すことでトランクスルー機構を利用できます。スキー板などの長尺ものも積めるので、荷物の積載能力はまずまずと言えるでしょう。

オプションパーツは、スペシャルティクーペらしく当時としては非常に充実していて、先述の本革シートのほか、サンルーフ、エアバッグ、そしてボーズ社製の高級オーディオシステム「アコースティックウェイブ・ミュージックシステム」などが選択可能でした。

短いモデルライフの間、1994年6月に、唯一にして最後の一部改良が行われました。それまで2リッターと2.5リッター、そして5速MTか4速ATしか選べないごくシンプルなグレード構成でしたが、このタイミングで細分化。「2000 V6」「2000 V6 スペシャルパッケージ」「2500 V6」「2500 V6 4WSパッケージ」の4グレードとなり、それぞれに継続して5速MTと4速MTが設定されています。

一部改良前までは全車に標準装備されていた4WS(四輪操舵)は、「2500 V6 4WSパッケージ」のみの装備に変更。サンルーフが装着できるのも「2500 V6 4WSパッケージ」のみとなります。リアスポイラーは2.5リッターモデルのみに装備され、さらに5色から選べたボディカラーは3色に減少してしまいました。

そしてなにより、改良前までは全車に標準装備されていたオートエアコンは、下位グレードがマニュアルエアコンに変更されてしまいました。このように一部改良とはいっても、コスト削減を感じさせる変更点が多く、従来からのファンにとっては少々さびしい思いをする「一部改良」となってしまいました。

残念ながら国内流通量は極小

冒頭で書いた通り、2019年7月現在、国内の中古車市場で出回っている個体はゼロ、というマツダ・MX-6。生産中止からもかなり時間が経っているので、もしMX-6のオーナーになる場合は、部品や消耗品をどうやって手に入れるのか、についてもきちんと考えておきましょう。「ラテンの旋律」というキャッチコピーのCMが多く放映されていたMX-6、その伸びやかなスタイリングは時代を先読みしすぎていたのかもしれませんね。それでは、また次回の記事でお会いしましょう!

[ライター/守屋健]

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