みなさん、こんにちは!今回はトヨタがかつて生産していたゆとりのあるサイズのクーぺ、セプタークーぺを紹介します。「セプタークーぺ?聞きなれない名前だな…」と思われた方もいるかもしれません。それもそのはず、日本で販売されていた期間はたったの4年間。販売も不調に終わり、2019年8月現在は国内の中古車市場で1台も出回っていない超希少車となっているのです。
当ウェブサイトは「スポーツカーラボ」と名乗っていますが、セプタークーペはスポーツカーというよりも、ゆったりと運転を楽しむパーソナルクーペ、といったほうが正しいクルマです。この記事では、日本で何台が現役なのかも不明な希少車「トヨタ・セプタークーぺ」について、じっくり紹介していきたいと思います。
元となったモデルはカムリ
出典:ウィキメディア
セプターを紹介するためには、元となったモデル、「カムリ」を紹介しないわけにはいきません。トヨタ・カムリといえば、現在でも10代目モデルが生産・販売され続けている、歴史の長いクルマです。現行型である10代目モデルは、日本での人気は今ひとつなものの、主戦場であるアメリカでは非常に好調な売れ行きを見せています。
カムリは、アメリカの歴史あるストックカーレース「NASCARカップ・シリーズ」に2007年から参戦。2015年にはドライバーズタイトル、2016年に米国車以外としては初のマニュファクチャラーズタイトルを獲得しています。また2017年には、ついにドライバーズタイトル、マニュファクチャラーズタイトルの両方を獲得するなど、「NASCARカップ・シリーズ」に欠かせない存在として成長。日本では考えられないほど、アメリカでの「カムリ」の名前は全国的に浸透しています。
そんなアメリカとのつながりが深いカムリですが、歴史をさかのぼると、1980年代からすでにカムリとアメリカの関係は始まっていました。カムリがアメリカで販売されたのは、3代目モデルが現役だった1983年からで、初年度に52,651台を販売。1988年からは、トヨタ・モーター・マニュファクチャリング・ケンタッキーがケンタッキー州ジョージタウンにて現地生産するなど、トヨタの世界戦略車の先駆けとなったモデルでもあります。
ちなみに、カムリは2016年にアメリカで38万8618台が売れており、これは毎日1000台以上売れている計算になります。また2013年には、アメリカにおけるカムリの累計販売台数が1000万台を突破。日本ではあまり見かけないものの、アメリカの人気は今も絶大です。
セプタークーペが販売されたのは、1992年から1996年のこと。当時アメリカで販売されていた北米版カムリをベースに、日本に逆輸入される形で導入されました。日本でもカムリは販売されていましたが、こちらは5ナンバーサイズでした。3ナンバーサイズのゆったりした北米版カムリは、日本導入時にセプターと改名。日本仕様に改良されて販売されました。
ボディバリエーションは3種類
出典:ウィキメディア
セプターは、セダン、クーペ、ステーションワゴンの3種類がラインナップされていました。セダンは日本で生産、クーペとステーションワゴンは、トヨタ・モーター・マニュファクチャリング・ケンタッキーで生産された個体を輸入して販売していました。
ステーションワゴンに関しては、FF駆動のステーションワゴンとしては珍しい、折りたたみ式の3列目シートを備えた7人乗りモデルとして注目を集め、比較的手頃な値段だったため堅調な販売を記録。販売終了まで一定の人気を獲得しました。細かなことですが、リアウインドウワイパーがフロント同様2本装備されていたため、後方の視界にすぐれていることもメリットのひとつでした。
一方、セダンはカローラをそのまま大きくしたようなデザインで、スタイリッシュなハードトップが人気を博していた日本では受け入れられませんでした。同じトヨタ内でも、看板セダンのひとつであるマークⅡ三兄弟がフルモデルチェンジをしたばかりというタイミングに重なり、セダンの販売にマイナスの影響を与えてしまったのです。
さらに残念な結果に終わってしまったのがセプタークーペ。当時は後輪駆動のスペシャルティクーペが幅を利かせていて、本格的な走りを志向していたり、高級感溢れる内外装を売りにしていたりと、非常に華やかなモデルが市場を占めていました。
その中で登場したセプタークーペは、内装のクオリティや搭載されているメカニズムの質自体は良かったものの、セダンをただ2ドアにしたような地味で特別感に欠ける外観や、FFという駆動方式など、日本のクーペ市場では「訴えかけるものがないクルマ」として認識されてしまいました。結果として、セダンよりもさらに売れ行きは低迷してしまいます。
セダンと共通のボディで実用性は抜群
セプタークーペは、スタイリッシュなわけでもなく、スポーティでもなく、高級感にあふれているわけでもない、実直なクルマです。アメリカでは、こうした質実剛健なパーソナルクーペの需要があったのかもしれませんが、日本では全く受け入れられませんでした。
セプタークーペのボディサイズは、全長4,780mm、全幅1,770mm、ホイールベース2,620mmはセダンと同一、全高1,405mmはセダンより5mmだけ低いという、セダンとほとんど同じサイズです。セプタークーペの利点はここにあります。つまり、2ドアながら後席足元は非常に広々としていて、トランクの容量がとても大きい。なぜなら、セダンとボディはほぼ共通だからです!
一方で、これだけ大きい後席を有しながら2ドアとしたことで、ドアがとても大きく、重量もかなりのものになりました。狭い場所でのドアの開け閉めには、かなり神経質になる必要があるとか…。
トランクと座席の広さのおかげで、実用性は抜群。車高も低くなく、後方の視界も良好なので、運転がしやすい。内装のデザインもそっけないものの、クオリティが低いというわけではない。見かけだけの高級感やスペック上での走りの性能には囚われない審美眼を持つ「玄人」向けのモデル、とも言えるのかもしれませんが、日本ではその玄人たちの目にも触れられずに終わってしまったのでしょう。
グレード体系はシンプル
搭載されていたエンジンは2種類。140psを発生する2.2リッターの直列4気筒と、200psを発生する3リッターのV型6気筒の2種類で、どちらも自然吸気エンジンでした。トランスミッションは、4速オートマチックのみ。グレード体系は、ベースグレードの「2.2」「3.0」と、高級仕様の「2.2G」「3.0G」の4種類をラインナップしていました。
チルト&スライド電動式ムーンルーフが全車に標準装備されていた点は、地味なセプタークーペの中でもキラリと光るポイントかもしれません。「3.0G」は最上級グレードらしく、装備は充実。レザーシート、ABS、トラクションコントロール、運転席エアバッグ、ワイヤレスキー、TEMS(電子制御サスペンション)など、上級車譲りの装備が奢られていました。
たった4年間という短い販売期間でしたが、一度だけ1994年にマイナーチェンジが行われています。フロントマスクを小変更したほか、リアコンビネーションランプを左右独立化。また、小型のリアスポイラーを全車標準装備とし、新色としてツートーンカラーである「パールトーニング」が設定されました。
現在では滅多なことでは見かけない超希少車に…
燃費性能は、比較的大排気量のエンジンと大きく重い車体であまり優れているとは言えず、2.2リッターエンジンモデルが9.6km/L、3リッターエンジンモデルが8.4km/Lと、リッター10kmにも届きませんでした。こうした点も、一般ユーザーから敬遠された理由のひとつかもしれません。
こうしてトヨタ・セプタークーペは、日本の中古車市場ではまず見かけることのない希少車となってしまいました。何も突出したところがない点が、逆に独特な存在となってしまったセプタークーペ。中古車販売サイトや店頭で見かけた場合は、ぜひ一度気にかけてみてくださいね!
[ライター/守屋健]