日常での使い勝手に優れるスタイリッシュなクーペ、日産・ルキノクーペ。ホイールベースの長さがポイント?

みなさん、こんにちは!今回は、日産がかつて生産していた2ドアノッチバッククーペ、「ルキノクーペ」をご紹介します。ルキノにはハッチバックモデルや、ハッチバックモデルにRV風の装飾を施した「S-RV」というモデルも存在していましたが、この記事では取り扱わず、クーペモデルに的を絞って紹介していきます。

シンプルなデザインのスタイリッシュな2ドアクーペですが、実は後席スペースもしっかりと確保され、高い実用性を持ち合わせていました。駆動方式はFFで、走り好きの若者からは軽視される傾向にありましたが、実はオーテックジャパンが開発を担当した真面目なスポーツモデル「オーテックバージョン」もラインナップされていました。今回はそんなルキノクーペの魅力に迫っていきたいと思います!

サニーベースのシンプルなクーペ


出典:ウィキメディア

ルキノクーペは1994年5月から1999年1月まで販売された、日産のクーペラインナップのボトムを担うモデルです。ベースとなったモデルは、1993年にフルモデルチェンジをしていた8代目サニー(B14型)です。約5年の短い生産期間でしたが、その間に2回のマイナーチェンジを行なっていて、前期型、中期型、後期型に大きく分けられます。

サニーをベースにした小型クーペは、サニーRZ-1、NXクーペと名前を変えながら生産されており、ルキノクーペもその流れの中のひとつです。しかし、このルキノクーペを最後に、サニーベースのクーペはついに生産を完全に終了、セダンモデルに統合されてしまいます。サニーベースのクーペの最終進化形と言えるでしょう。

デザインは、フロントマスクはほぼサニーと共通の意匠で、リアについてはルキノクーペ独自のセミファストバックスタイルとなっています。NXクーペとは異なり、奇抜なデザインは取り入れられず、全体的にシンプルでスタイリッシュ、悪く言えば地味でおとなしいエクステリアとなっています。近年の「目立たせよう」とするデザインとは対極で、こうした落ち着いたエクステリアが好きな人にとっては貴重な存在かもしれません。

参考:日産・ルキノクーペ買取専門ページ!

ボディサイズは全長4,285mm×全幅1,690mm×全高1,375mmで、ベースとなったサニーより全長が35mm長く、全高は10mm低くなっています。意外なのは、2ドアのルキノクーペの方が全長が伸びているという点ですね。プラットフォームはそのまま流用しているので、ホイールベースは2,535mmとサニー、ルキノクーペとともに共通となっています。

高い実用性を確保

このホイールベースの長さと、プロペラシャフトが存在しないフロントエンジン・フロントドライブというレイアウトのおかげで、後部座席の広さは大人2人がきちんと座れるスペースが確保されています。2ドアなので乗り降りこそしにくいですが、クーペなのにきちんと座れる後部座席を装備したクルマというのは、なかなか貴重な存在ではないでしょうか?しかも、クルマのサイズ自体はあくまでコンパクトカー、というのもルキノクーペの美点のひとつと言えるでしょう。

最も廉価なグレードのMMには装備されないものの、それ以外の全車で採用されているのがトランクスルー機構です。6対4でリアシートを倒すことができ、それによって長尺ものを搭載できるようになります。トランクのサイズも、セダンと変わらないホイールベースの恩恵で小型クーペとしては異例なほど大きく、ゴルフバッグとスポーツバッグをセットで3個飲み込みます。

軽量な車体のおかげで燃費も良好

車体の重さは970〜1,100kgと軽量に仕上がっていて、この軽量さのおかげで燃費も極めて良好でした。当時の1.5リッタークラスのクルマの中ではトップクラスの燃費を誇り、1.5リッターモデル(GA15DE型エンジン搭載車)の5速MT車は、10・15モードの燃料消費率試験にて19.6km/Lという好成績を記録。実用性だけでなく、経済性にも非常に優れたクルマと言えるでしょう。

駆動方式は、ベースになったサニーのセダンには四輪駆動が存在したものの、ルキノクーぺには設定されておらず、FF1種類のみ。トランスミッションは5速MTと4速ATから選択可能でした。搭載されるエンジンは当初は2種類で、1.5リッター・105psのGA15DE型エンジンを搭載したMM、GG、GG TYPE S(FB14型)と、1.8リッター・140psプレミアムガソリン仕様のSR18DEエンジンを搭載した1.8SS(HB14型)で、グレードとしては4種類がラインナップ。

この中でもMMは最も低価格の廉価版として用意され、車両本体価格はエアコン付き5速MT車で104.8万円と、若者でも頑張れば入手できる価格に抑えられていました。ルキノクーペのメインターゲットは20代の若者とされていたので、この価格帯のクルマを用意することは必要だったのでしょう。ちなみに、当時はまだ運転席SRSエアバッグと助手席SRSエアバッグは標準装備されておらず、オプション装備として設定されていました。

走りを磨いたオーテックバージョン

1996年6月には、よりスポーティな走りを志向した「オーテックバージョン」が発売されます。1.8SSの5速MTバージョンをベースに、エンジンをさらに強力な2リッター・175psのSR20DE改良型に換装(プレミアムガソリン仕様)、専用ビスカスLSD付きのクロスした5速MTを組み合わせて、軽量な車体をさらにスポーティに走らせることが可能でした。他にも、専用エアロパーツ、専用フロントブレーキ、フジツボ製マフラー、スポーツサスペンション、スポーツタイプのフロントグリル、専用のシート地とドアトリム、オーテックのロゴ入りホワイトメーターなど、かなり気合の入った作り込みがなされています。ボディカラーはブラック1色のみ、という潔い設定。1996年9月にはマイナーチェンジが行われ、中期型に移行しますが、「オーテックバージョン」もそれに伴って改良版が登場しています。

1996年9月のマイナーチェンジでルキノクーペは「中期型」に移行、全車に運転席&助手席SRSエアバッグを標準装備とします。上級車種の1.8SSにはABSが標準装備とされ、この変更は「オーテックバージョン」にも引き継がれています。デザイン面では、社名のロゴが変更されたほか、日産エンブレムのサイズと位置の変更、フロントグリルのデザインがハニカムメッシュ形状に変更されるなどの改良が施されています。

1997年9月に最後のマイナーチェンジが行われ、ルキノクーペは「後期型」に進化します。後期型最大のトピックは、1.6リッターの排気量から175psを絞り出すSR16VE型を搭載した「VZ-R」が追加されたこと。トランスミッションは5速MTのみというかなり硬派なスポーツモデルでした。ルキノクーペ「VZ-R」は日産の長い歴史の中でも、かなりの希少なクルマで、その生産台数はわずかに100台弱と言われています。あの「ケンメリGT-R」KPGC110型の生産台数が197台であることを考えると、どれほどレアかということがわかるのではないでしょうか。その後、ルキノクーペは1999年1月に生産中止、1994年4月に販売終了となります。

今ではすっかり希少車に…

2019年6月現在の国内の中古車流通量は、なんとゼロ。レアな「オーテックバージョン」や「VZ-R」だけでなく、全てのグレードが現在は全く流通していません。もし、どうしても乗りたいという場合は、気長に出物を待つしかなさそうです。もし出物があった場合も、部品の調達ルートには要注意!この年代の日本車は、海外のクルマより部品の入手が難しい場合が珍しくありません。購入時にはクルマの現状確認と、部品の調達方法について、お店の人としっかりと相談しましょう。

実用性が高く、安価で、シンプルな2ドアクーペとして販売されていた日産・ルキノクーペ。実用性一辺倒ではなく、かなり走りに振ったモデルまでラインナップしていた、奥深いモデルでした。現在は「小型クーペ・冬の時代」ではありますが、またこんな魅力的なクルマが登場するのも期待したいところですね。それではまた、次回の記事でお会いしましょう!

[ライター/守屋健]