まずデザインありき!クラシックカーのデザインと現代のクルマの信頼性を両立した光岡自動車・ラセードについて紹介

みなさん、こんにちは!突然ですが、クルマの魅力ってなんでしょうか?動力性能、積載能力、快適性、ドライビングプレジャー…様々な意見があるかと思いますが、「デザインが第一」と言う方も中にはいるかと思います。今回紹介する光岡自動車・ラセードはまさにそんなクルマ。「まずデザインありき」で作られた、ある意味で非常に純粋な成り立ちをしたクルマです。

そんなラセードは、生産台数の少なさや、その衝撃的なスタイリングにより、生産を終えてから10年以上が経った今でも根強いファンが存在し、中古車市場で一定の値段を維持しています。この記事では光岡自動車・ラセードの他車にはない独特の魅力に、じっくりと迫っていきたいと思います!

光岡自動車とは?

光岡自動車は、日本で10番目の国産自動車メーカーとして認可されている、ハンドメイドで少量生産のクルマづくりを続けている、国内では非常に珍しい会社です。フォルクスワーゲン・タイプ1のボディを換装した改造車「BUBUクラシックSSK」や、ロータス・スーパーセブンのレプリカ(いわゆるニア・セブン)である「ゼロワン」、独特のスタイリングで話題をさらった「オロチ」など、特にスタイリングについてこだわりを強く持っているメーカーとして知られています。

現在でも少量多品種・ハンドメイドでのクルマづくりを続けていて、現行車種としては「ビュート」「ビュートなでしこ」「ロックスター(限定200台完売後、2019年に50台、2020年と2021年に75台ずつの追加生産が決定)」「ヒミコ」「リューギ」「リューギワゴン」「ガリュー」、そして側車付軽2輪貨物の型式認定を受けた2人乗りEV「ライクT3」がラインナップされています。

「ライクT3」以外のクルマは、ベースをなった車両を一度分解し、新たに製作したボディを架装した後、一台一台手作業で仕上げていくという、極めて手の込んだ手法が取られています。選ばれるベース車両は、国産の現行車両が多く、信頼性と走行系の部品の入手のしやすさ、メンテナンスのしやすさを重視して選ばれます。

クラシックでレトロなクルマには乗りたいけれど、本物のクラシックカーは維持が大変だし、エアコンなどの快適装備が付いてないのが大変…光岡自動車はそうした声に応えるように、レトロで優美なデザインと、現代のクルマに求められる信頼性・快適性を両立したクルマを送り出し続けています。

ラセードの登場


出典:ウィキメディア

「ラセード」は大きく分けて初代モデルと2代目モデルが存在し、それぞれ1990〜1993年にかけてと、2000〜2006年にかけて生産されました。

参考:光岡自動車・ラセード買取専門ページ!

クラシックカー然としたフロントフェンダーに、丸型のライト群、そして全長5,100mm、全幅1,870mm、全高1,280mmという大柄な車体に、特に長大な3,375mmというホイールベース。とても現代のクルマには見えない独特のスタイリングをまとって登場した初代モデルは、市場に大きなインパクトを与えました。限定500台を発売開始後4日で完売を果たすほどの人気を誇ったのです。

初代モデルのベースになったのは、S13型の日産・シルビアです。光岡オリジナルの延長フレームの上に、シルビアのモノコックボディを載せています。エンジンやトランスミッション、プロペラシャフトなどの位置関係は変わっていませんが、フロントサスペンション一式を前方に出すことで、なんと900mmもホイールベースを延長。前方に延長した分は、ステアリングコラムシャフトを伸ばすことで対処しています。

ベースとなったのはシルビア

流麗なデザインのボディパネルはFRP製。よく観察すると、フロントガラスやドア、サイドミラーなどにベースとなったシルビアの名残が見られます。採用されたエンジンは、1.8リッターの直列4気筒エンジン「CA18DE型」で、最高出力135ps、最大トルク16.2kgmを発生。これに4速ATを組み合わせています。ドライブトレーンもシルビアから流用することで、整備性の高さ、部品の入手のしやすさを実現。もちろん、パワーステアリング、パワーウインドウ、エアコンといった快適装備もシルビアから受け継がれていて、現代のクルマとしての快適性が確保されています。

ちなみに、外装パーツには多くのダミーがあり、例えばフェンダーの後ろにあるタイヤカバーにはタイヤは入っておらず、電装部品やバッテリーなどが収められています。また、6本あるエキゾーストパイプもダミーです。一方、フロントの目立つ場所に備えられた4本のラッパは本物で、実際にクラクションとして作動します。

ホイールベース延長の弊害


出典:ウィキメディア

個性的なスタイリングが特徴のラセードですが、一方で欠点も少なくありません。まず第一に挙げられるのが、一気に延長されたホイールベースによる小回り性能の悪化。最小回転半径はなんと6.3mに達しています。全幅も大きいため、曲がりくねった路地やUターンをする際は注意が必要と言えるでしょう。また、極めてロングノーズのデザインとなっているため、前方の見切りはかなり悪く、かつフェンダーや飛び出したフロントライトもドライバーの視界を遮る要因のひとつになっています。

デザインを気に入って買うクルマではありますが、やはり気になるのが燃費。ベースのシルビアに比べて約100kgも増えてしまった車重により、燃費は悪化しています。他にも、手作りのFRP製ボディパネルは事故の修復時に費用と時間がかかる、定員は4名だが後部座席は狭く実質荷物スペースが非常用としてしか使えない、などのデメリットが挙げられます。

ラセードの2代目モデルは2000年に登場。先代モデルよりも少ない、100台の限定生産でした。2004年には本革シートを採用した特別限定使用車が販売され、こちらは2006年まで生産が続けられました。

ベースとなった車両は同じく日産・シルビアですが、先代モデルのS13に対し、2台目モデルはS15をもとにして製作されています。基本的なスタイリングは初代と同様、車両製作のプロセスなども特に変わりはありません。2代目モデルのボディカラーはレッド、ブルー、ホワイトの3種類から選択できました。

エンジンは少し排気量が拡大され、それに伴って最高出力や最大トルクも増加しています。搭載されるエンジンは「SR20DE型」で、2リッターの直列4気筒DOHCという形式から、最高出力160ps、最大トルク19.2kgmを発生。FRというレイアウトや、4速ATとの組み合わせのみという点も初代モデルから引き継がれています。ちなみに、2代目モデルのコンバーチブルモデルが東京モーターショーに展示されましたが、残念ながら市販化はされませんでした。

本物のクラシックカーになってしまう前に

ラセードは初代モデル、2代目モデルともに生産終了からかなり時間が経っているものの、中古車市場での人気は依然として高いです。2019年9月現在、国内の中古車市場に出回っている個体数は5〜10台前後。価格は150万円前後から420万円前後まで、かなりの幅があります。クルマの性格ゆえに、大切に乗られている個体が多いという点も特筆すべきでしょう。

先述の通り、メカニズム面はシルビアをベースにしているので、現在でも比較的走行に関する部品の入手はそれほど難しくはありません。ただし、FRP製のボディパネルに関しては、歪みや塗装状態についてきちんと確認する必要があります。塗装の塗り直しにしろ、歪みの修正にしろ、かなりの時間と費用がかかってしまうからです。

独特のクラシカルなスタイリングのクルマに、毎日運転できる信頼性を付け加えたい。そんなシンプルな願いのもとで生まれたラセードは、現在でも根強いファンに支えられています。パワステ、パワーウインドウ、エアコンといった現代のクルマらしい装備と、優美でレトロなエクステリアの組み合わせは、他のメーカーではなかなか味わえません。光岡自動車の躍進の原動力にもなったラセード。「本物のクラシックカー」になってしまう前に、一度は味わってみたいクルマですね!

[ライター/守屋健]